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2017.09.08
ここにもまた、効率・採算・・・ 鉄道に揺られながら車窓を流れる平凡な風景をボーッと眺めるのは性に合っている。狭い日本と言われるが、四季折々の色合いやその地方独特の風俗・習慣も垣間見られ、飽きることはない。家のつくり、屋根瓦の色、さらには大根の干し方、田んぼに立つ稲架の形や架け方、果てはお葬式の様式まで実にさまざまだ。もちろん、地元の乗客同士が交わすお国言葉もある。これに季節や時刻、その時の天候といった要因も加わる。それらに触れるたびに「日本は広い」と思う。山陽本線のような幹線沿線では少なくなったが、そこから枝分かれするローカル線の車窓はまだまだ豊かだ。 さて、“流れる風景”を目で追うための適度な速度というものがあり、鉄道の場合は時速60〜80kmくらいがいいと考える。それ以上だと、「移動の為に乗らされている」という感覚が生じてくるし、それ以下だと少々まだるっこしい。教員生活まだ浅き頃、突然思い立って、岡山駅を夜行列車で発ち、早暁の下関駅で下車。そこから福知山までの日本海沿いをドン行列車で乗り通したことがある。海の色も山の色も鮮やかで、速度も適度だった。深夜の福知山駅に到着したときは異様なハイテンションになっていた。もっとも話す相手とてない一人旅ではあったが。 そうした豊かさをもたらせてくれたローカル線が少しずつ消えていく。確かに朝夕の高校生だけが主たるお客さんでは採算は難しい。しかし、全国に地方交通線(いわゆるローカル線)を敷設していった当初の目的は、中央と地方との人・物の流れを推進し、地域間格差を解消する云々ではなかったのか、との疑念は残る。ここにもまた、効率、採算・・・。 興味本位でほんのたまーに乗るだけの者は言う立場にないってことは分かってはいるのだが。 広島県の三次(みよし)と島根県の江津(ごうつ)を結ぶ山あいのローカル線・三江(さんこう)線が間もなく廃止される。その前にぜひとも乗っておきたいと思う。ついでに木次(きすき)線にも。 (梶原洋一) コラムバックナンバー |