OTUニュース
2017.07.26
実るほど 頭を垂れる稲穂かな


  前回、渋染一揆の若きリーダー・良平さんについて書きました。良平さんが生まれ育ったのは、私の実家のすぐとなりのムラでした。現地研修に訪れる人々の希望があれば、良平さんのお墓参りもコースに組み込みます。もう20年も前のことですが、大阪の同和教育推進教員10数名も「ぜひ」ということで墓地にご案内したことがあります。
  そのムラには「そっとしておいて欲しい」という人々も多くいらっしゃるのですが、「せっかくワシらのムラに来てくださるのに、地元のモンがご案内せんでどうすりゃあ」と言って、必ず同行してくださるWさんという長老がいらっしゃいました。当時80代半ばのWさんは、若い頃事故で片足を失って義足でしたが、優しい笑顔で墓地への急斜面をゆっくり登っていかれるのでした。道すがら、学習者にポツポツと語ってくださるその語り口は大変穏やかで、「良平さんはワシらのムラの誇りじゃ」が口癖でした。
  大阪の教員たちは、現地での学習も深められたのですが、それより何よりWさんそのものに惹かれたのでした。数日後、当時私が勤務していた県同教の事務局に、大阪から電話が入りました。「ぜひ、Wさんの話をもっと聞きたい。今度はWさんに会うために岡山に行きたい」という内容でした。Wさんに伝えると、「ワシはそんな大層な人間じゃねえ」と恐縮されていたのですが、教員たちの熱意に押され、町内の会議室に出向かれたのでした。朴訥なお人柄そのままの語りは、同席させていただいた私にも染みこんできました。

実るほど 頭を垂れる稲穂かな

  ふつうのおじいちゃんでしたが、魅力あふれる特別なおじいちゃんでした。

(梶原洋一)



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