OTUニュース
2015.09.30
原風景


  永田町をはじめとする世の喧騒をよそに季節は確実にめぐってきており、その確かさに、どこかホッとする気がする昨日・今日。
  県南の田んぼでも稲穂がたわわに実り、赤とんぼが舞う季節になってきた。“夕焼け小焼けの赤とんぼ 負われて見たのはいつの日か”作者は兵庫県竜野市生まれの三木露風。彼が7歳の時、母親が郷里の鳥取に帰ってしまいました。母の背に負われて見た故郷竜野の情景を忘れられずに、32歳の時にこの詩を詠んだという。人には誰しも、心の中に原風景があるに違いない。
  私の場合は、近所に「もらい湯」に行った帰り道、母と手をつないで歌った「くつがなる」の風景をなつかしく思い出す。歌の合間に母が入れる“あいづち”がうれしくて、わずか10分ほどの道のりを繰り返し歌いながら帰ったものだ。薄暗く細い夜道、まばらな街灯に照らされた道ばたの草、母親と私の笑い声、満天の星、稲わらのにおい、母の手のぬくもり。私が5歳になる前、わずか31歳でこの世を去った母との唯一といっていい記憶だが、今でも鮮やかに蘇り、甘酸っぱいものが胸にこみ上げてくる。東京生まれ・東京育ちの彼女にとって私の存在は、大きな心のよりどころだったろうと今にして思う。
  幼少を過ごしたなつかしい風景と、そこでの人との様々なかかわりは、色、声、音、味、そして匂いまで驚くほど鮮明に記憶に残るのだろう。機械に囲まれ便利になりすぎた世の中だが、今を生きる子どもたちにもそうした「人との関わり」をたくさん経験してほしいと思う。そして先生たちには、ご自身の“原風景”を子どもたちにぜひ語ってあげてほしいと思う。子どもたちのために、先生ご自身のために。

(梶原洋一)



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