OTUニュース
2014.10.20
憂いのそばに


  身長が高く、運動能力抜群でダンスが得意なミホ(仮名)はいい意味で目立つ存在でした。低学年の子どもたちから見れば確かに憧れのお姉さんでありました。しかし私には、胸の内にある憂いから逃れようと、少々無理をしながら元気に振る舞っているように見えてしかたがありませんでした。名札の是非は別として、学年当初に胸の名札をさりげなく裏返しにしていたのは、そっとしておいてほしいという彼女のメッセージだったに違いありません。親の離婚からまだ1か月。「苗字が変わる」という現実を受け入れるには、多感な12歳の少女にはもう少し時間が必要だったのです。
  ミホが行き詰まったのは卒業後何年も経ってからでした。深夜にかかってきた母親からの電話。すでに一杯やっていた私は妻に車を出してもらって駆けつけましたが、鋭い眼光の奥にはやっぱりあの頃の優しい眼差しがありました。「すみませんが、二人だけで話をさせてください」母親にお願いして場を外してもらい、ミホと久しぶりに向き合いました。あの頃のこと、あれからのこと、今のこと・・・。
  本人の努力だけではどうにもならない現実を前にして途方に暮れる若者は間違いなく増加してきています。自己責任論など論外の厳しい現実です。そうした問題をそのままに、何が「点数・順位・学力」でしょうか。
  しばらくしてミホは、それまでのことはリセットして美容師になるための学校に行くと宣言しました。「もしそうなったら客の第1号になる」と、私はどっかで聞いたような台詞を言ってしまいました。今でも時々思い出しては、ガンバレ!と雲に向かって叫んでいます。でも問題点がひとつ・・・・、その時私のアタマにいったいどれだけの本数が残っているのだろうか。
(梶原洋一)



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