OTUニュース
2014.06
競争社会のなかで


  卒業目前の3月、備前焼の大きな壺に思い出の品々を詰めて保管し、十年後に開けようと約束していました。あれからちょうど10年となる今年のGW、皆が母校に集まりました。十年ひと昔とはよく言ったもの。懐かしい写真や作文で大いに盛り上がったあと、近くの焼肉屋に移動しました。あの頃の“しゃんとこ兵衛”さんは10年後も健在で、コトがスムーズに運びます。銀行員、保育士、証券マン、印刷工に介護福祉士、なかには大学院生もいたりして、しかしそれぞれ今の立場は違っても顔を合わせた瞬間に時間が短絡し、小学校6年生に戻るから不思議です。
  酒も入り、座が乱れてしばらくした頃、ハルキ(仮名)が私の前に座りました。身体に少しのハンディがあり、その他いくつかのしんどさをすでに12歳の時点で抱えていたハルキはしかし、底抜けに明るく間違いなくクラスのムードメーカーでした。「お久しぶりです、先生」グラスに注ぎながらハルキは語り始めました。家族のこと、自分のこと、仕事のこと・・・。自己実現していくための夢は今も持ち続けているハルキ。しかし、専門学校の2年間で借りた奨学金の返済が重くのしかかっていました。その額、実に300万弱。さらに兄の交通事故のこと、働けなくなった親のこと。22歳の青年が背負うにはあまりに重いものでした。適切な言葉が見つからない無力の私は、杯を置くしかありませんでした。「30歳まではガムシャラに働いて奨学金(借金)を返し、それからもう一度勉強し直して再チャレンジしたい」そう話すハルキ。永田町や霞が関の“エライ人”たちは、いったいこの国の若者たちが置かれている現実をどれだけ理解しているのでしょうか。いや、理解しようとしているのでしょうか。
  教育を含めて世の中、点数だ順位だと競争ばやりです。もちろん競争そのものを否定はしません。あってしかるべきです。しかし競争した「結果」をもって「成果」とするのなら、せめてスタートラインをそろえるべきではないでしょうか。
  「負の連鎖」を断ち切ろうと歯を食いしばるハルキ。未来に向かって歩もうとする若者たちをそのままに迎えられる社会をつくっていくのも教職員組合の大きな仕事のひとつです。
(梶原洋一)



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