OTUニュース
20101010号
学びの原点


  月曜日の夜8時になると、その地に住むおじいちゃんおばあちゃんたちが懐中電灯で足元を照らしながら会館にやってくる。手提げ袋の中には、ノートと鉛筆が入っている。平均年齢は80歳を超えているだろう。最高齢で学級長のおじいちゃんは必ず30分前にはやってきて、夏は窓を開け放ち、冬はストーブに火を入れてくれる。多くは語られないが、月曜日が待ち遠しいと顔に書いてある。一人、また一人と集まってくるにつれて楽しい会話が広がってゆく。やがて「それじゃあ始めますか」という声とともに学習が始まってゆく。誰も気取らないし、その必要もないから質問も次々と飛び出す。「『わ』の縦棒は跳ねるんじゃったっけ?」
  ある時は文字のお勉強。またある時は同和問題を中心とする人権学習。
  差別ゆえに主要な職業から排除され、その結果としてもたらされた貧困。さらに連鎖する子どもの学力。言われなき差別のために学習から遠ざけられてきた人々が、学力(=生きるエネルギー)を奪い返すために始まった識字学級。学級生たちの表情は実に生き生きとしている。そして美しい。「勉強して今まで分らんかったことが分かってくる。それが楽しくてしょうがない。」と言われる。学びの原点だと思う。
  学テをはじめ、これでもか!と現場に押し寄せてくる「学力向上施策」は、その対極にあるように思えてならない。
梶原洋一


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