OTUニュース
20100220号
2010年屠蘇の味


  1月1日、束になった年賀状の中に、信州からのなつかしい便りが入っていた。陸上の長距離選手で笑顔がすてきな彼は、いつもクラスの中心にいた。その彼が、卒業が近づくにつれ、少しずつ口数が減り、投げやりな態度を示すようになっていった。しかし、その理由を知る者はクラスに誰もいなかった。「どうするんなら。本当にこのままでええんか。」放課後、家庭訪問をしては彼に迫っていった。3月末に両親が離婚すること、彼は弟とともに母親の里である信州に引っ越すことが決まっていた。「中学校の入学式の日になって、『Rがおらん。』いうてみんな慌てるじゃろうが。姓も変わるし、手紙のやりとりだって互いに気をつこうて、ぎくしゃくせんか。」無理強いするつもりはなかったが、うつむいてばかりの彼を見るのがたまらなかった。
  卒業式の2日前、彼は「明日の放課後、みんなに話をしたい。」と言ってきた。実はその前日、別の女の子が「私はみんなとは違う中学に行きます。今までありがとう。」と宣言したばかりだった。彼女に刺激を受けたのだろう。翌日の放課後、彼はクラスの前に立った。
  「みんなに話したいことがあります。」こう切り出した直後、大粒の涙がほほを伝った。その翌日、彼は胸を張り笑顔で小学校を卒業していった。あれから3年。この春、彼は信州の中学校を卒業する。
  年賀状に記された「元気でやってます」の文字に、あの素敵な笑顔がよみがえり、いつにも増して屠蘇が沁みわたった。
(梶原洋一)


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