OTUニュース
20080320号
「宿泊拒否」事件から見えてくること


  2003年11月、熊本県にある黒川温泉のホテルが、ハンセン病元患者の宿泊予約を取り消した事件を記憶の方も多いだろう。無知ゆえに完治者からもハンセン病が「移る」と恐れ、「同宿のお客さまに迷惑をかけるから」という理由で引き起こされた差別事件だった。熊本県知事が「病気は治っている。心配ない。」と説得したにもかかわらず、ホテル側の拒否の姿勢は変わらなかった。法務局と県が旅館業法違反の罪で地裁に告訴状を提出した時、総支配人は「宿泊拒否は会社の方針であり間違いではないが、拒否判断は総支配人である私がしたのでお詫びします。」という意味不明の"詫び状"を持参したが、「個人ではなくホテル会社のお詫びでなければ受け取れない」と自治会が受け取りを拒否したのは当然である。ところが、その直後から元患者の自治会に対し、言われなきバッシングが始まった。「詫び状を受け取らないとは何事だ」に始まり、「宿泊拒否もホテル側の権利だ」と続き、仕舞いには「税金で養われているお前らは人間のくずだ。早く死ね」であった。
  被害者の側に非があるかのごとき発想は、沖縄における米海兵隊員による女子中学生暴行事件の際にもあった。その結果、彼女は告訴を取り下げるしかなかった。そして、日教組の全国教研の会場使用をホテルが一方的に契約解除した際にもあったと聞く。
  もちろん、こうした発想の持ち主はごく少数であろう。しかし、確実に増えているように思えてならない。所得を始めあらゆる面で進行・深化している「二極化」の問題とも無縁ではなかろう。「しんどさ」を抱えた人が急増しているのだ。そして、悲しいことにその矛先はいつも「弱者」や「被害者」に向けられるのだ。つまり、そうした人々もまた「格差社会」の被害者なのだ。矛盾に満ちた社会を変えていく原動力は、そうした人々とともにつくりあげていく大衆行動しかなかろう。労働組合の果たすべき役割は極めて重要であると自覚したい。
(梶原洋一)


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