OTUニュース
20080120号
「乾いた言葉」


  先日、家族そろって「初詣」に出かけた。年の初めの定例行事で、もう十数年続いている。神も仏も信じない"乾いた"人間であるが、このごろ家族で出かけることが少なくなった我が家では大事にしたい「行事」の一つだと独りで思っている。
  本殿への参拝を終え、「3年続けて"凶"じゃあ!」などとおみくじで盛り上がっている妻や子どもとともに階段を降りていたときだ。「階段で遊ばないでください」とスピーカーを通した声が耳に飛び込んできた。声の主はアルバイトとおぼしき若い男性である。振り返ると、5、6歳くらいの女の子とその母親がじゃんけんをしながら階段の途中で止まったり、降りたりしている光景があった。「じゃんけん、ポン。パイナツプル・・・」少し長い階段だったので男性の声は届かなかったのか、なおも親子の「ゲーム」は続く。「階段で遊ばないでください!」スピーカーの声は次第に大きくなっていく。ようやく聞こえたようで、決まり悪そうな表情の母親は子どもと手をつないで足早に降りていった。横幅の広い階段は人も疎らで、母と子は決して他人に「迷惑」をかけてはいなかったと思われた。男性にしてみれば、階段の安全を確保するために注意したのであろう。しかし、それでも、と思ってしまう。同じ言葉でも、言い方が違えば伝わり方も違ってくる。子どもたちを相手にしている私たちは特に気をつけておきたいことだ。言葉を通して「思い」を届けられたらといつも思う。
  やがて、「階段は左側通行となっております!」という"乾いた"声が私の背後に繰り返されるようになった。私は黙って歩き続けた。
(梶原洋一)


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