OTUニュース
20071120号
「相手の思いを我が身に重ねて」


  先日、岡山駅の新幹線ホームを歩いていたら、修学旅行の団体に出会った。今年もう3回目だ。あふれんばかりの笑顔と大きなバッグ。こっちまでほっこりしてしまう。
  ・・・今から20年以上も前のこと。3クラス120名の修学旅行を無事終え、数日後にはホールに所狭しと写真が展示された。同行したカメラマンが精力的に撮影したスナップだ。子どもたちは、休み時間ごとに注文袋を片手に、思い出話に花をさかせつつ気に入った写真の番号を袋に記入していった。その中で、彼独特のはにかんだような笑顔でいつもその場を素通りするH君がいた。
  ある日の放課後、誰もいないホールで写真を一心に見つめているH君の姿に出会った。彼の手には、注文袋がにぎられてはいなかった。
  父親のいない彼の家庭は貧しかった。教材費を集める日(当時は現金集金だった)、彼の集金袋には、「わずかなお金で笑われるかもしれませんが、もう少し待ってください。」と母親の手紙が入っていることもあった。母親思いの彼は、家庭の状況をよく理解していた。
  私は咄嗟に「気に入った写真があったら注文すりゃあええよ。お金はいつでもええから。」と言いながら彼に注文袋を手渡した。しばらくして彼は、3枚の注文番号を記入し、私の所へ持ってきた。私は自分の財布から150円を取り出し、袋に入れた。   その翌朝、母親が職員室に飛び込んできて、私に黙って150円を手渡された。その瞬間とんでもない間違いをしていたことに気がついた。H君と似たような子ども時代を過ごした自分の姿を、今のH君と重ねられていなかった。
  20年以上前のことだが、今でも鮮明に思い出すことができる。忘れられないし、忘れてはならない痛恨の思い出である。
(梶原洋一)


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